●世界のインターネットトラフィックの90%がビデオトラフィックに

映画は熟年期に入り、テレビは壮年期を過ぎた頃だろうか。クラウド上のデジタルビデオはいまだ青年期にある。
YouTubeのCBO(chief business officer)に就くロバート・キンセル(Robert Kyncl)氏は、2016 International CESの基調講演において、米国では2020年までには、すべてのビデオ(動画)の75%は、インターネットを経由で送られるようになり、世界のインターネットトラフィックの90%がビデオトラフィックになると予測した。

同様に、米Cisco(シスコ)も2019年までに世界のインターネットのトラフィックの90%はビデオになるだろうという予測を出している。

米Nielsenの調査によれば、テレビ視聴は過去15年間に視聴時間は増えてきたものの、2009年にピークに達した後には減り続けている。米国の映画、テレビ、ビデオといった映像市場は約2000億ドルであり、このシェアがクラウド上に流れている。

最も顕著なデジタルビデオのパラダイムシフトは、スマートフォンやタブレット端末によってビデオがよりパーソナル化され、モバイル視聴を急伸していることだ。特に、若者のモバイルビデオ視聴を加速させているのがミュージックビデオ(MV)であり、ビデオを見ながら音楽を楽しむことが一般化している。モバイルサイズの画面は、音楽を聴きながら見るのにちょうどいいサイズなのだ。ある程度小さいことが、かえって音楽を主役にさせている。

●オンラインビデオがテレビよりも成長している理由

2016年 2月にCiscoが発表したIPトラフィック動向を予測した年次報告書「Cisco Visual Networking Index(VNI)」によれば、2020 年までに全世界のモバイルユーザーは、2015 年の48 億人から 55 億人に拡大する。2020 年までに、全世界のモバイル・デバイスの台数は、2015 年よりも 40 億台増加して 116 億台に達すると予測している。

2020 年までに、モバイル接続の平均速度は2015 年の 2.0 Mbps の 3.2 倍となる 5.6 Mbps に達、全世界のモバイル IP トラフィックは 2015 年の 44EB(エクサバイト)からから年間 367 EBにまで増加する。ちなみに1EBは1兆MB、10億GBに相当する。これはモバイルだけの数値である。
ちなみに、米Oracleの予測ではIoT (Internet of Things)の爆発により、デジタルデータの全量は2010年に1200EBだったものが、2020年には4万EBにさまで増えると予想している。
オンラインビデオは、ケーブルTVだけでなく、テレビからも視聴時間を奪うと見られており、その最大の要因がビデオのモバイル化である。

YouTubeのロバート・キンセル氏は、オンラインビデオの成長要因として、

  1. デジタルビデオは本質的にモバイルである
  2. 音楽にビデオが欠かせなくなったこと
  3. ---のほかに、

  4. オンラインビデオには多様性がある
  5. テレビよりも没入しやすくインタラクティブ体験ができる

--ことを挙げている。

コンテンツの多様性は、特に移民国家で、人種のサラダボウルと言われる米国では不可欠の要素かもしれない。その裏返しとして、個人主義や冒険心が強くあり、インタラクティブ体験や新しいエクスペリエンスを追い求める国民性にもつながっているかもしれない。

そのほかの要素として、オンラインビデオには地域性とともに、広域性、グローバル性の両方がそろっていることや、SNS/ソーシャルメディアとの連動があることも付け加えておいた方がいいかもしれない。もちろん、コンテンツ資産がクラウド上に移っている以上、それに最適化したセキュリティの対応も欠かせない。

もはや映像産業は、映画やテレビ、ビデオパッケージといった単一メディアにこだわっていては、生き残りができなくなっている。
これほど、映像の撮影が手軽になり、国境を飛び越えていく時代において、テクノロジーを先取しながら、グローバルにも訴求するストーリーをつくりだす手腕が試されている。
(清水メディア戦略研究所 代表取締役 清水計宏)

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