●プラットフォーム時代に単品商売にこだわる日本

すでに3Dプリンター、ドローン、AR/VR、スマート家電、ロボット、クラウド・コンピューティング、シェアリングエコノミーにおいて、日本企業は牽引役になっておらず、米国や韓国、中国の企業が先を行き、その後追いに走っている。

 IoT、ロボットおよびAIのテクノロジーは、自動車の業界地図も一変させる要因となる。にもかかわらず、IoTと連動するスマート家電においてさえ、技術大国と思っていた日本は後塵を拝し、韓国などの海外企業が先導してきた。

かつてであれば、新しい家電・電気製品が出れば、流行に敏感で、われ先にと商品を追い求めるアーリーアダプターの層が厚くあった。
しかし、少子高齢化とともに、余裕のある若者層も薄くなり、中高齢者は慎重を期すようになっている。
 
従来、家電製品は単品での販売が勝負だった。IoT化により、スマート家電はすでに家電の境界を超えてきている。一台の家電製品がスマートホームにつながり、スマートビルやスマートシティにもつながっていく。
また、スマート家電は、スマート端末との連動し、さまざまなWebサービス、商品販売、課金・決済ともつながる。競争は家電・電気分野だけにとどまらない。
 
サムスン電子がこの春に発売したスマート冷蔵庫「Family Hub(Family Hub Refrigerator)」は、かつての冷蔵庫には無い、さまざまな機能を搭載し話題になった。

クレジットカード決済で冷蔵庫からオンラインショッピングができるだけでなく、スピーカーが内蔵され、インターネット上のコンテンツだけでなく、家庭内の音楽を楽しむために、一般のBluetoothワイヤレススピーカーに接続し、音楽ストリーミングを楽しむこともできる。

スマート冷蔵庫

 今の日本では、「冷蔵庫は冷蔵機能があれば十分」だと思いがちで、こうした製品が国内家電メーカーから先頭を切って生み出される可能性は低い。

 しかし、もはや単品商売が主流の時代は終わりを迎え、Webサービスと連動するプラットフォームがビジネスの成否を分かつようになっている。試行錯誤と挑戦を続けなければ、その先にある果実をつかむことはできない。

 サムスン電子は、2015年だけでデベロッパーとIoT開発者の支援に1億ドルを投資しており、2017年には全テレビを含む90%をIoTに対応させ、2020年には全製品がIoTにつながるようにサービス基盤を構築する計画を進めている。

●日本の消費者のスマートホームへの関心は主要7カ国で最下位

 
 ドイツに本拠を置く、世界的なマーケティングリサーチ会社であるGfK(ジーエフケー)社が、2015年に中国や日本、ブラジル、米国などの7カ国の7000人以上の一般消費者を対象に、スマートホームに関するオンライン調査を実施した。その結果、全体の約9割が「スマートホーム」という言葉を認識していることが分かった。
 
全体の約半数の消費者が、今後数年間で自らの生活にインパクトを与えるモノとして「スマートホーム技術(Smart Home Technology)」を挙げた。これは、「ウェアラブル技術(Wearable Technology)」(35%)を上回る。

 なかでも中国では75%の消費者がスマートホーム技術を最も生活にインパクトを与えるモノとして捉えている。それに対し、日本の消費者は19%と7カ国中で最下位になった。
 
このことから、GfKは「これまで日本は先端技術で世界をリードしてきたが、家のサイズが小さく、市場に特殊性もあることから、今後数年、スマートホーム関連では中国が市場を引っ張ることになるだろう」と予測している。
 
日本人とってスマート冷蔵庫は魅力的ではないかもしれないが、中国や他の先進国では、高価格帯の大型機種において、スマート冷蔵庫と一般的な冷蔵庫の価格差がほとんどなくなっていることもあり、購買欲をそそる対象になっている。

 アリババTモールの電化製品販売部門(天猫電器城)と独GfKが、2016年5月初めに共同で「2015年デジタル家電消費動向報告」を発表した。
 それによると、2013年以降、Tモールのスマートテレビ、スマートエアコン、スマート冷蔵庫などのスマート家電の年平均成長率は売上額ベースで約300%に達している。
 
 中国の家電製品ユーザーの43%が少なくとも1種類のスマート家電を所有しており、91%が個人用にスマートフォンを使用している。また、50%超の人がタブレットPCを使い、約40%がスマートテレビを保有している。
 
 中国では、スマートフォンやタブレット、パソコンと同様に、家電・電気製品は規格化され、部品の標準化が進んでいるため、製品化はさほど難しくなくなっている。中国では、スピードが重視されており、企業成長のために、世界からヘッドハンティングや技術投資に積極的に取り組んでいる。

爆買いで日本に訪れている中国人も、いずれ” Created in China”製品に誇りを持つときが来るはず。そのとき、日本企業は何をもって世界企業と戦っていくのか? しっかりと戦略・戦術を立てておかないと、さらなる凋落が待ち受けている。
(清水メディア戦略研究所 代表取締役 清水計宏)