自動車メーカーにも採用されるHoloLens

HoloLensは、透過型ディスプレイから見える現実世界に、3DCGやテキスト、画像、動画といった仮想空間を重ね合わせ、指や手の動作(ジェスチャー)でインタラクティブに操作できるヘッドマウントディスプレイだ。

開発者向けキットであるMicrosoft HoloLens Development Editionのプレオーダーが始まったのが2016年2月29日。価格は3000ドル、決して安い金額ではない。しかし、予想以上に人気を博し、2016年3月30日から出荷が開始されているが、現時点で14カ月待ちとなっている。

HoloLens本体は、一般的なメガネやサングラスよりも大きく、サンバイザーのような感じで視野全体を覆い、固定用ヘッドベルトが頭部の後ろまでかかる。
ARグラスの形状をしているが、OSにWindows 10を搭載したバイザー型ホログラフィックコンピューターである。

スウェーデンの自動車メーカーであるVolvo(ボルボ)は、次世代のクルマの開発や設計、組み立て、新技術の開発にHoloLensを活用することを公表している。
消費者が車種を決めて、ボディカラーやホイールデザインをいろいろ試したり、ホログラフィックのクルマを目の前に表示して、それをインタラクティブに操作することができる。

このほか、従来であれば立体物をデザイン、成形するには、2D(2次元)上に3Dのモデルを作るという作業が一般的だった。しかし、HoloLensの3DモデリングアプリであるHoloStudioを使用することで、立体物を3Dのままデザインすることができるようにもなった。360度回転させたり動かしたりでき、上下左右さまざまな方向から見ることができるため、イメージ通りの立体物をつくり出すことができる。作成したデザインは、3Dプリンターで、そのままプリントアウトすることが可能になる。

日本で早期にHoloLensを手に入れるには?

残念ながら、日本国内においては、まだ販売計画が決まっておらず、開発キットもリリースしてはいない。
では、日本で早期に手に入れる方法はないのだろうか? 実は、MicrosoftとHoloLensのEAP(Early Access Program)の契約を結べば早期に手に入れることが可能だ。

EAPとは、開発中のため公開されていない製品・技術などを、顧客企業や希望者に提供して使用してもらう制度。このプログラムにより、製品を提供するメーカー側には製品の発売前にユーザーの評価や動作検証の結果を得ることができるというメリットがある。顧客側には、新製品の特徴や機能を一般に先駆けて知ることができる。ただし、企業によっては、無料貸与の形を採ることもあるが、HoloLensのEAPには多額の契約料を必要とする。
HoloLensのEAPの内容にはSTEP 1とSTEP 2があり、日本円換算で総額3億4000万円ぐらいが必要だ。
STEP 1は、5日間のHoloLensに関するコンサルティングおよび打ち合わせで、これだけで4000万円がかかる。STEP 2ではエンジニアが5人ついて、12週間のうちにアプリケーション開発をする。これに3億円かかる。この費用にはHoloLensの実機5台が含まれている。

HoloLensをトレーニングに活用するJAL

日本企業で、すでにMicrosoftとEAP契約を結び、開発を進めているのが、日本航空(JAL)だ。

JALは、HoloLensを活用して、現時点で2つのコンセプトを具現化する初期的な開発を公表している。この開発を本格的に進めて実用化を目指しており、そのほかの領域の活用についても検討している。
一つ目は、ボーイング「737-800型」航空機の運航乗務員訓練生用トレーニングツールだ。HoloLensを装着することで、リアルなコックピット空間を体感でき、運航乗務員訓練生の副操縦士昇格訓練の補助的ツールとなりうる。
現在、訓練の初期段階において、コックピット内の計器・スイッチ類を模した写真パネルに向かって操作をイメージしながら、操縦手順を学習しているが、今後は目の前にある空間にホログラムとして浮かび上がる精細なコックピット内の計器・スイッチ類の操作ができるようになる。映像・音声ガイダンスに従って、HoloLensと一体になってシミュレーションすることで、より効果的な訓練が期待できるとしている。
もう一つは、「ボーイング787型」用エンジン整備士訓練用ツールとしての活用。これは、整備士の養成訓練において、エンジンそのものの構造や部品名称、システム構造などが、気軽にリアルに体感・学習することができる。現在は、航空機が運航していないスケジュールを利用しているため、訓練時間が限られているが、この拘束がなくなる。また、エンジンパネルを開けないと見ることができないエンジン構造の教育を、テキストを使って平面図で実施しているが、これをリアルにできるようになり、質の高い技能習得が期待できる。

HoloLensが一般に普及するには、おそらくまだ時間がかかるだろう。けれども徐々に、現実と仮想はシームレスになり、ディスプレイの表示はフレームが無くなる方向へと着実に進んでいっている。今後は、遠隔地とのビジュアルコミュニケーションも、まるで一緒の部屋で歓談するように体験することができるようにもなるだろう。
まさにSFで夢見た世界がもうじき実用化され、日常になろうとしている。

(清水メディア戦略研究所 清水計宏)
トップ画像:Photo by By Jorge Figueroa (2015) / (CC BY 2.0)