●AI関連企業に多大な投資をするGoogle

 Googleは、AIのテクノロジーを自らで全てを開発したのではない。パートナーシップや提携、企業買収によって技術を獲得し、発達させてきた。
2013年3月、GoogleはDNNresearch(DNNリサーチ)を買収した。DNNリサーチは人間の脳の神経回路網の学習プロセスをシミュレートする人工ニューラルネットワークを研究し、オブジェクト認識技術を発達させている。

 2014年1月には、4億ドルで囲碁AI「AlphaGo」を開発したDeepMind(ディープマインド)という大モノを傘下に入れている。
 DeepMindは、人間と似たようなやり方でどのようにビデオゲームをプレイするかを学ぶニューラルネットワークを作成し、人間の脳の短期記憶の模倣を研究している。DeepMindが開発した「DQN」(Deep Q-Network)と呼ばれるAIは、家庭用ゲーム機「Atari 2600」用の49本のテレビゲームを、ほとんど何も教えることなしに、自ら学習してプレイすることができるようになった。DQNは、初めのうちは素人もどきのプレイをしていたが、数時間後にはゲームの方法を学んで、一般の人では思いつかない裏技まで生み出した。

AI

 Googleは、同じく2014年1月にAI技術を使用したサーモスタットの開発やスマートホーム・ベンダーのNestも32億ドルで買収している。また、2014年10月にはオックスフォード大学のDark Blue Labs(ダーク・ブルー・ラブス)とVision Factory(ビジョンファクトリー)の両社を買収すると同時に、オックスフォード大学へ多額の寄付をし、AI領域でパートナーシップを結んでいる。これらの研究チームはDeepMindと協力して研究開発を進めている。さらに、2016年7月にはフランスで機械学習・物体認識技術を開発するスタートアップのMoodstocksを買収している。Moodstocksは、2012年から画像認識の技術研究をスタートし、その技術を物体認識に転用している企業だ。買収後は、YouTubeやChromeの研究をしているパリのR&Dセンター内で研究開発を進めている。
こうしてM&A(Mergers & Acquisitions)を積極的に進めながら、GoogleはAI関係の技術に磨きをかけている。

●契機となったウィーン交通条約の改正

 「自動車」は、その名称とは裏腹に、つい最近の2013年まで自動運転は認められていなかった。というのも、1968年に決められた「自動車は運転者によって制御されなければならない」とするウィーン交通条約に縛られてきたからである。
 条約には、2015年4月時点で85カ国が加盟しており、加盟国は定められた国際ルールに沿って国内法を整備しなければならない。国内法の大幅な改正が困難だった日本、米国、カナダ、オーストラリアなどは加盟していないが、自動運転の制約については、日本もこれに軽視するわけにはいかなかった。
それが2014年3月になってウィーン交通条約が改正され、流れが変わった。運転者が自動運転機能を無効化あるいは停止できることを条件に、自動運転が合法化されたのである。このことが自動運転車の開発にとって追い風になった。

 自動運転については、自動車や運転者の安全を監視する米国運輸省の部局であるNHTSA(National Highway Traffic Safety Administration:米高速道路交通安全局)が徐々に自動化の度合いを高めていくシナリオを想定し、段階に応じた自動運転のレベルを定義している。

 レベルは0から4まで5段階あり、レベル4は完全自動運転システム。加速、操舵、制動の全てをシステム側が実行し、ドライバーが全く関与しない。無人車にもなる。Googleは最高のレベル4から直接開発を始めており、Googleの自動運転車にはハンドルやペダルがない。ただしNHTSAは、Googleが公道走行試験をしている自動運転車をレベル3と捉えている。
 レベル3は、駐車場内や高速道路内など限定された交通条件で可能な条件付き自動運転システムを指す。加速、操舵、制動は全てシステムが行い、緊急時だけドライバーが対応する。通常の走行時には映画・テレビを見たり、本を読んでもいいとされる。旅客機では以前から取り入れられている自動操縦が、このレベル3相当になる。
 ちなみに、旅客機は離陸したあとの上昇、巡航、降下、着陸まで自動操縦でできるモデルも珍しくない。ただ、パイロットは安定飛行中であっても、計器類の監視、地上管制官との情報交換を怠らず、目視やレーダーで確認できない乱気流にも気を遣っている。
 従来は、緊迫した状況に陥ったときは、人間の判断が優位とされていたが、最近では人間よりも自動操縦を信頼すべきというコンセプトがしだいに優位に立とうとしている。今後、自動運転車も旅客機と同じ技術レベルに移行していくだろう。実現の鍵をにぎるのはAIだ。AIは日々蓄積されるビッグデータを糧にして学習を続けながら走る。自動運転車の実現はIoTの集大成ともいえるだろう。

(清水メディア戦略研究所 清水計宏)