●「所有」から「共有」へ

 インターネット経済で大きく注目されている現象の一つとして、シェアリングサービスの台頭がある。
たとえば、他の人のクルマに乗る配車サービスのUber、Lyft、Sidecarはよく知られている。そのほかクルマをシェアするZipcar、他人に愛犬を預けるDogVacay、Rover、人のダイニングルームで食事をするFeastly、個人の空き部屋賃貸・宿泊を仲介するAirbnb、クルマやボート、家、工具を人に貸すRelayRides、Getaround、Boatbound、HomeAway、Zilokなど、この傾向は、ありとあらゆるものに広がってきている。

 日本においては、民家に有料で宿泊する民泊は、その市場を認められながらも、既存のホテル・旅館業界を圧迫しがちだったり、集合住宅やマンションの治安やゴミ排出の問題などで、ブレーキとアクセルが一緒にかかった状態になっている。また、利用者が急増するに伴い、一部の宿泊客が盗みをしたり、逆に部屋貸しする人のなかには盗撮カメラを仕掛ける人など、安全・セキュリティとプライバシー保護が課題になっている。

 だが、ソーシャルメディアを気兼ねなく使うユーザーの増加に伴って、モノ、金、サービスの交換・共有によるシェアリングエコノミーが拡大を続けていくことは確実だろう。

 今回は、世界192カ国に広がり、一軒家も個室も泊まることができる、世界最大級の宿泊予約サイトとなったAirbnb(エアビーアンドビー)と中国の競合企業を中心にクローズアップする。

●対象国でないのは北朝鮮、イラン、シリア、キューバだけ

 Airbnbは2008年に米サンフランシスコで設立された。
米国の美術大学であるロードアイランド・スクール・オブ・デザインで出会ったBrian Chesky(ブライアン・チェスキー)とJoe Gebbia(ジョー・ゲビア)が共同創設者だ。
 それから8年あまりで世界192カ国、3万4000都市以上に商圏を拡大。総掲載件数は200万軒に達した。Airbnbの年間利用者数は延べ6000万人となり、2015年夏だけでみても1700万人。2010年から5年間で見ると、何と353倍にも急伸した。ピーク時には1日に42万5000人がAirbnbを介して、だれかの家に滞在・宿泊していることになる。
 いまやサービス対象国から外れているのは、北朝鮮、イラン、シリア、キューバだけ。そのほかの全ての国々でAirbnbの予約が使える。

 Airbnbは、「エアベッドとブレックファースト(Air Bed & Breakfast)」の意味。創設者が大学時代に友人と借りた部屋にエアベットと朝食で各地から来る人を泊めたことがきっかけとなった。
もともとB&Bは、北米や英国、アイルランド、ニュージーランド、オーストラリアなどの英語圏において、宿泊と朝食が込みで比較的低価格で利用できる小規模な宿泊施設を指す。言ってみれば「一泊朝食付きの民宿(ペンション)」のようなもの。朝食しか提供しないのは、朝食だけであれば飲食サービス免許を取得しないでもいい国や自治体、州が米国に多かったことによるためだ。ちなみに、Airbnbでは物件を掲載する貸し手は何の法律にも拘束されない。このため、既存のB&Bの経営者からも反発する声がある。

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Photo by Reed Probus[CC BY 2.0](2015)

 2015年にAirbnbを利用して宿泊客は4000万人以上に上り、訪日外国人旅行者数のうちAirbnbの宿泊客は同年138万3000人にもなっている。2015年の訪日外国人客数は対前年比47.1%増の1974万人に上っており、約7%がAirbnbを使用したことになる。中国人の多くは中国の民泊予約サイトを利用しているため、民泊の利用者は合計すると300万人近いと見られている。

 既存の宿泊設備が都心部・繁華街に位置しているのに対し、Airbnbにおける物件の74%はその外側にある。利用客はローカルなところに分け入り、現地の人びとと触れ合うようになり、これが国際親善にも一役買っていると言われる。
一般の家に宿泊することで、そこのホストらから近隣の美味しいレストランや料理、名物、カフェなどといった一押しスポットや名品を教えてもらったりできるケースもある。地元のさまざまな情報も得られる。とりわけ特定の趣味やこだわりを持った人には、それに関係する地域に泊まることができることが喜ばれる。まさにソーシャルサービスの本懐ともいえる。

●日本のAirbnb利用者は前年比230%超

 日本におけるAirbnbサービスの利用者は、2015年の1年間で約130万人。2016年は10月時点で累計300万人を超え、230%超の成長が見込まれている。また、掲載されている物件数は3万件を突破した。日本はいま世界有数の成長マーケットになっている。
 さらに、2015年に国内のAirbnbホストが生み出した利益は2363億円に上り、経済波及効果に換算すると5207億円になるという。標準的な国内のホストの年間収入は122万2400円。いまやホストの生活を支える大切な収入源になっている。
国内のホストの平均年齢は37歳。2015年の一般的な貸出回数は101泊。ホストの性別を見ると男性が多い(女性38%、男性62%)。世界的な割合で見ると、女性や50歳以上のホスト数が増える傾向にあるという。日本はまだ過渡期ということだろう。

 Airbnbは、リオ五輪(リオデジャネイロ・オリンピック・パラリンピック)の際には、2015年3月には既に代替宿泊施設公式パートナーとなり、同委員会と契約を締結し、現地の仲介物件数を拡大させた実績がある。
 リオ五輪開催期間にAirbnbの民泊仲介サービスを利用して同市に宿泊したゲスト数は、2016年8月3日から23日までだけで8万5000人を超えた。現地ホストの収入は計3000万ドル以上に上り、リオデジャネイロ市内での宿泊客が消費した金額は約1億ドルになったという。
 8万5000人以上の宿泊客のうち60%は、リオ五輪で初めてAirbnbを利用した。利用者はブラジルのほか、米国、アルゼンチン、英国、フランスの順に多かった。1泊あたりの平均宿泊料は165ドル。ゲストの同市内の1日当たりの平均支出額は136ドルだった。
 AirbnbのWebサイトに掲載されているブラジル国内の掲載物件数は約10万件。そのうち約3万8000件が同市内であり、市内のホストのうちの62%が五輪で初めてゲストを受け入れたということだ。

 2020年の東京五輪(東京オリンピック・パラリンピック)では、ホテルの建設、造築が進んでも、東京、大阪、京都、福岡など11都府県で約1万室の客室が不足すると予想されている。民泊はその不足を補う有力候補であり、難しい利権・既得権益を調整しながらルールづくりが進められており、今後も注目を集めるのは間違いない。