AI、自動運転車、ロボッティックスの推進力となる5G

5G(第5世代移動通信システム:IMT-2020)は、「ギガビット・ワイヤレス・ブロードバンド」と言われるように、ギガビットクラスの超高速無線通信網を実現する。つまり現在の4G LTE/4Gの4G(第4世代移動通信システム)の次の通信規格である。

5Gが普及していけば、モバイル端末同士はもとより、あらゆるモノがつながり合う。自動車と自動車(車同士)や自動車と信号機や道路標識などのインフラ (路車間)同士が直接に相互通信できるV2X(Vehicle to Everything)のほか、車車間通信(V2V:Vehicle to Vehicle)、路車間通信(V2I:Vehicle to Infrastructure)、全てがつながり合うConVeX(Everything to Everything)までの通信が含まれている。文字通り、IoTの基盤が整う。

5Gは、IoT+ビックデータ+AIの起爆力になるだけでなく、自動運転車/自立走行車、ロボッティックス、AR(拡張現実)/VR(仮想現実)、ドローン、HMI( Human Machine Interface)、ゲーム、コネクテッドホームといった分野の強力なエンジンにもなる。それだけではなく、医療・医薬、教育、製造業をはじめとする電気通信以外の業界・領域にも多大な影響を及ぼし、2020年以降の産業構造と業界地図を一変させてしまう可能性がある。もちろん、既存の企業や業界が隘路に追い込まれる一方で、新たな産業や企業が成長軌道に乗り、さまざまなビジネスを育てることだろう。

2016年に当時のオバマ政権は5G網への移行を促進させるため、4億ドル超を投じることを発表した。米国4都市で実施する大規模な5G試験へ資金を提供し、2023年までの7年間に5G関係の研究プロジェクトへの投資支援を決めている。

一般に世界主要国では2020年から2021年にかけて5Gの商用化が計画されている。米国ではFCCおよび通信キャリア、研究期間などが実証実験を早めており、計画は前倒しされることもありうる。

5Gがサービスされれば、スマートフォンなどのモバイル端末では毎秒1Gbps、家庭向け固定端末なら実に10Gbpsの超高速通信が利用できるようになる。

データ遅延については、エンド・ツー・エンドで数ms(1msは1000分の1秒)の超低遅延を実現。無線区間の遅延時間は4Gの10分の1、つまり1ms以下に短縮することを目標としている。このため、データ転送量や遅延時間においても放送波をしのぐと予想される。

というのも、地上デジタル(地デジ)放送(HD放送)は10M~14Mbps(最大17Mbps)で放送されており、1秒当たり約1.2M~1.8MBのデータ量で放送されている。BSデジタル放送のHD放送については約17~20Mbps(1秒あたり約2.1~2.5MB)である。

地デジに使われている動画圧縮(MPEG-2)は15フレームを1ブロックとして伝送しており、毎秒30フレームになるため、1ブロックのデータは0.5秒分のデータとなる。15フレームには、1枚のフレームを静止画圧縮したIフレームとともに、これからの差分データとなるBフレーム、そしてBフレームが連続することで生じる誤差の蓄積を補正する前後Bフレームとの差分データであるPフレームで構成されている。

つまり15フレーム分のデータ蓄積に0.5秒、15フレーム分のデータ伝送に0.5秒、15フレーム分の復号に0.5秒が必要となる。これによりライブ中継であったとしても1.5秒程度の遅延が生じてしまう。つまり、5Gの遅延の方がはるかに小さいのである。 ただし、緊急地震速報では文字スーパーの先行表示を実施すること遅延短縮を図っているほか、受信機の仕様変更で地デジについては0.5秒まで遅延が短縮できる。

5Gにおいては、この遅延を極力少なくしなければいけない。というのも、走行・稼働したら常時接続が求められる自動運転車や自動操縦、ロボット制御、遠隔医療といった、直接生命の危機や身体の安全性にかかわる分野では、遅延が命取りになることもあるからだ。

自動車やバスが60kmで走行していたとすると、1秒間で約16.6m進むことになる。これが自動走行、自動制御だとしたら、運行管理や指示伝達が1秒遅れただけで大事故につながるケースが出てきてしまう。現行の地デジのような遅延は5Gでは許されないのである。